「叔父さん、もう民宿をやめるんだって」
そんな話を聞いたとき、親戚の頭に浮かんだのは、長年続いてきた民宿をこれからどうするのか、という問題でした。
■50年続いた民宿を、どうすればいいのか
叔父は、金沢で小さな民宿を50年近く続けてきました。
若い頃から働き、多くのお客さんを迎えてきた家です。昔から泊まりに来てくれる常連さんもいて、叔父にとっては単なる「家」ではありません。
仕事場であり、人生そのものだった場所です。
けれど、叔父も高齢になりました。妻はすでに亡くなり、子どもたちは遠方でそれぞれの生活を送っています。
「誰か継いでくれればいいんだけど……」
そう思っても、実際に民宿を引き継ぐのは簡単ではありません。
建物や設備は古くなり、客室には布団や家具、厨房には食器や調理器具が残っています。長年使ってきた看板や、昔の写真、宿泊記録もあります。
この民宿をどうするか。
考え始めると、いくつもの問題が出てきます。
ただ、ここで一つ、分けて考えたいことがあります。
民宿をやめることと、建物をどうするかは、必ずしも同じ問題ではありません。
■「民宿をやめる=建物を壊す」ではない
叔父が民宿をやめるとしても、建物まで必ず取り壊さなければならないわけではありません。
例えば、次のような選択肢が考えられます。
- 建物を残し、別の用途に活用する
- 条件が合えば、宿泊施設としての再利用を検討する
- 住宅など、別の用途で使う可能性を考える
- 建物付きでの売却を検討する
- 解体して、土地としての活用や売却を検討する
- すぐに結論を出さず、管理しながら今後の方針を考える
金沢には、古い建物を保存し、次の世代へつないでいく取り組みがあります。
例えば、建物が「金澤町家」に該当する場合には、改修や活用に関する制度を確認できる可能性があります。
ただし、古い建物ならすべて制度の対象になるわけではありません。建築年や構造、建物の状態、予定する用途など、個別の条件を確認する必要があります。
制度があるから使える、と考えるのではなく、まずはその建物がどのような家なのかを把握する。
そこから始めることが大切です。
■長年続いた民宿だからこそ、建物以外にも確認したいことがある
50年近く民宿を営んできた家には、一般的な住宅とは違う特徴があります。
客室や厨房、宿泊客用の家具や備品。長年使ってきた看板や、宿泊記録、写真なども残っているかもしれません。
一般の住宅として考えると、「古い」「修繕が必要」「荷物が多い」といった問題が目立つでしょう。
一方で、建物の来歴や間取り、地域とのつながりを大切にしたい人にとっては、別の見方ができる可能性もあります。
ただし、宿泊施設として再利用する場合には、建物の状態だけでなく、建築や消防、旅館業などに関する確認が必要です。
改修費用をかければ活用できるとは限りませんし、用途を変えることで必要な工事や手続きが変わることもあります。
だからこそ、「誰か使ってくれないかな」という気持ちだけで進めるのではなく、どのような使い方が考えられ、そのために何が必要なのかを整理しておくことが重要です。
■残す方法だけでなく、解体する場合の制度も確認する
もちろん、すべての古い建物を残せるわけではありません。
建物の傷みが大きく、改修費用も高額になる。今後の活用方法も見つからない。
そうした場合には、解体して土地として活用する方法も検討対象になります。
金沢市には、危険な空き家の除却に関する補助制度が設けられてきました。ただし、対象となる建物や工事、補助の条件などが定められており、古い家なら誰でも利用できるものではありません。
制度の利用を考える場合は、現在の募集状況や要件を市の公式情報で確認する必要があります。
また、解体を決める前には、解体費用だけでなく、建物を残した場合との違いも考えておきたいところです。
例えば、建物付きであれば活用を検討できる可能性があっても、更地にすることで選択肢が変わる場合があります。
一方で、建物の維持管理が難しく、危険性が高まっている場合には、解体を優先して検討すべきこともあるでしょう。
大切なのは、残すことを前提にするのでも、壊すことを前提にするのでもなく、条件を確認して比較することです。
■家の中の物は、建物の方針を考えてから整理する
実家終活では、建物だけを考えていても前に進みません。
今回の民宿なら、布団、食器、調理器具、業務用冷蔵庫、家具、昔の宿泊記録、写真、看板、そして叔父の私物があります。
思い出の品もあれば、処分に費用がかかる物もあるでしょう。
遠方に住む子どもたちが、何度も金沢へ通って片付けるのは大きな負担です。
ここで「家をどうするか決める前に、家の中を全部片付けなければ」と考えると、ますます動けなくなってしまうかもしれません。
私なら、まず建物の今後について考えられる選択肢を整理します。
建物を残して活用するなら、備品の一部を引き継げる可能性もあります。売却する場合と解体する場合では、必要な片付けの範囲や進め方が変わることもあります。
もちろん、実際に何を残せるか、どのような処分が必要かは、物件や契約条件によって異なります。
片付けを始める前に、建物の出口と必要な作業を整理する。
この順番を意識するだけでも、無駄な作業や費用を避けられる可能性があります。
■叔父本人の気持ちと、家族の事情を分けて考える
50年続けてきた民宿なら、叔父には「できれば誰かに使ってほしい」という思いがあるかもしれません。
反対に、「もう十分やった。建物は壊してもいい」と考えている可能性もあります。
家族も同じ気持ちとは限りません。
「思い入れがあるなら残したい」と考える人がいる一方で、管理や費用の負担を心配する人もいるでしょう。
建物を残すには、修繕費用だけでなく、日常的な管理や将来の責任も伴います。
そのため、家族の誰か一人が「残したい」「売りたい」と考えているだけでは、結論を出しにくいことがあります。
まずは、叔父本人がどうしたいのか。家族は何を心配しているのか。それぞれの考えを整理することが必要です。
そのうえで、残す場合、売却する場合、解体する場合について、費用や手間、今後の管理を比較していきます。
■「残す・売る・壊す」を、費用と将来の負担で比べる
今回の民宿について考えるなら、少なくとも次の点を確認したいところです。
- 建物や土地の状態、法的な条件
- 建物を残して活用する場合に必要な改修や手続き
- 売却を検討する場合の条件や諸費用
- 解体する場合の費用や利用できる制度
- 家財の整理・搬出にかかる費用
- 家族が現地へ通う時間や交通費
- 維持管理を続ける場合の年間負担
そして、今かかる費用だけでなく、5年後も同じ状態だった場合にどうなるかも考えておきたいところです。
例えば、今は売却や活用の方針が決まらず、当面保有することになったとします。
その場合も、固定資産税や建物の管理、必要な修繕などの負担は続く可能性があります。
「今すぐ決めない」という選択をするなら、いつ、何をきっかけに再検討するのかまで決めておくと、問題が宙ぶらりんになりにくくなります。
■実家終活代行が担うのは、選択肢と進め方を整理すること
実家終活代行では、実家を土地・建物・環境・市場性・法務・難易度・親族・税務や資金面など、8カテゴリー40項目から整理する「ご実家総合診断書」を用意しています。
目的は、単に売却価格を考えることではありません。
その家にどのような選択肢があり、それぞれにどんな費用やリスク、手間があるのかを整理することです。
今回の民宿であれば、建物を残す可能性、売却を検討する場合の条件、解体する場合の費用や制度などを並べて考えます。
必要に応じて、不動産や建築、登記、税務などの専門家への相談も検討します。
私たちが売買の仲介や解体工事、法律・登記などの専門業務を直接行うわけではありません。
実家の状況を整理し、何をどんな順番で進めるのかを考え、必要な専門家との連携や進行を支えること。それが私たちの役割です。
■金沢の民宿の話は、一般の実家にもつながっている
「うちは民宿ではないから関係ない」と思う方もいるかもしれません。
けれど、昔は商売をしていた家、店舗兼住宅、農家だった家、離れや倉庫が残っている家、親が長年集めた物が大量にある家など、一般的な住宅とは少し違う実家は、決して珍しくありません。
所有者本人が高齢になり、子ども世代は遠方に住んでいる。
どうするか決めなければいけないのは分かっている。でも、何から調べればいいのか分からない。
そんな状態になっている家もあるでしょう。
実家終活は、結論が決まってから相談するものではありません。
売るのか、残すのか、壊すのか。あるいは、しばらく保有するのか。
何も決まっていない段階で、考えられる選択肢を並べてみることにも意味があります。
■金沢市のご実家も、まずは無料診断で整理してみませんか
実家終活代行では、ご実家の状況を整理し、考えられる選択肢や今後の進め方を検討する無料診断を行っています。
- 古い建物を残すべきか、解体すべきか分からない
- 親が営んでいた商売をやめた後、建物をどうすればいいか悩んでいる
- 家財が多く、片付けをどこから始めればいいか分からない
- 家族の意見がまとまらない
- 遠方に住んでいて、何度も現地へ通うのが難しい
こうした段階でもご相談いただけます。
最初から売却ありき、解体ありきで考える必要はありません。
その家にはどんな選択肢があり、何を確認し、どの順番で進めればよいのか。
まずは一緒に整理するところから始めてみませんか。
実家のこと。一人で悩まず、一緒に考えましょう。
参考・関連情報
※補助制度には、建物の条件、用途、工事内容、申請時期などの要件があります。制度の利用を検討する際は、金沢市など各自治体の公式情報で最新の内容をご確認ください。