今回は、神戸市東灘区にある実家を相続した、30代の青年からの相談です。
依頼者が両親を亡くしたのは、ほんの一年前。遺言によって相続したのは、神戸市内の広い一戸建てでした。
東京で正社員として働く青年にとって、その家は大切な場所である一方、どう扱えばよいのかわからない存在になっていました。
実家には、幼い頃の思い出が詰まっています。
それだけではありません。お父様とお母様が設計士と何度も相談を重ね、自分たちの理想を形にした家でした。間取りや窓の位置、部屋から見える景色。そこには、両親が家づくりに込めた思いが残っています。
だからこそ、簡単に売却を決めることはできません。
しかし、東京での仕事は忙しく、神戸の実家に戻る時間をなかなかつくれない。家財の整理も、建物の管理も、思うように進んでいませんでした。
依頼者は、実家を放置したいわけではありません。ただ、何から手をつければよいのかがわからないのです。
「実家を売ってほしい」という連絡が増えていく
そんな依頼者のもとに、父方の親戚から連絡が来るようになりました。
「そろそろ、あの家を売ったらどうだ」
「知り合いに不動産投資をしている人がいる。あの家を買い取って、活用したいと言っているんだ」
親戚に悪意があるとは思いたくありません。家の管理が難しいことを心配して、話を持ってきてくれたのかもしれません。
けれども、依頼者にとっては、戸惑うことばかりでした。
紹介された投資家とは、一度も会ったことがありません。どんな人なのか、なぜ実家を買いたいのか、どのように活用するつもりなのか。詳しい話を聞く前から、売却を勧められているように感じてしまいます。
さらに、両親が亡くなってからというもの、不動産会社からの営業も増えていました。
電話や訪問で、土地や建物の売却を勧められる。仕事中にも電話がかかってくることがあり、対応するだけでも負担になっていました。
親戚の紹介だと言われれば、無下に断ることもためらわれます。
かといって、仕事を休んで神戸に戻り、会ったこともない相手と話をする余裕はありません。
「自分の知らないところで、実家の売却話だけが進んでいく」
そんな感覚が、依頼者をいっそう困惑させていました。
「家が泣いている」と言われて、何も言えなかった
親戚からは、こんな言葉も投げかけられました。
「管理できていないじゃないか。家が泣いているぞ」
「放っておいたら、建物の価値だって下がってしまう」
言われていることは、わからなくもありません。
人が住まなくなった家は、換気や清掃、庭の手入れなどが行き届かなくなることがあります。雨漏りや設備の不具合など、異変に気づくのが遅れる可能性もあります。
実際、国土交通省も空き家の適切な管理について情報を公開しています。
参考:国土交通省「空き家対策」
ただ、青年にも事情があります。
両親を亡くした悲しみが消えないうちに、東京での生活を続けなければならなかった。仕事をしながら、遠く離れた実家の管理や家財整理まで一人で進めるのは簡単ではありません。
「管理できていないのは、自分が悪いのだろうか」
「両親が大切にしていた家なのに、何もできていない」
そうした申し訳なさがあるからこそ、親戚の言葉が胸に刺さります。
けれども、管理が難しいことと、すぐに売却しなければならないことは、同じではありません。
まずは家の状態を確認し、何が必要なのかを整理する。そのうえで、売却するのか、別の方法を考えるのかを決めてもよいはずです。
親戚の紹介だからこそ、条件を確認しておきたい
親戚が紹介してくれた投資家が、必ずしも問題のある相手だというわけではありません。
実家を購入して活用したいという申し出自体は、選択肢の一つです。
ただし、紹介された相手だからといって、条件を確かめずに話を進める必要はありません。
例えば、次のような点は確認しておきたいところです。
- 誰が買主になるのか。個人なのか、法人なのか
- どのような目的で購入し、どのように活用する予定なのか
- 提示された価格の根拠は何か
- 家財の整理や修繕など、売却前に必要な作業は何か
- 契約条件や引き渡し時期はどうなっているのか
買主が不動産会社であれば、国土交通省の検索システムで宅地建物取引業者の情報を確認できます。
参考:国土交通省「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」
買主が法人の場合は、国税庁「法人番号公表サイト」 で法人の名称や所在地などを確認することもできます。
もちろん、こうした情報を確認しただけで、相手の信用性や取引の安全性がすべて判断できるわけではありません。契約条件をよく読み、必要に応じて不動産取引や法律の専門家に確認することが大切です。
また、不動産会社からの勧誘や契約について不安がある場合には、神戸市の消費生活相談窓口などに相談する方法もあります。
親戚との関係を大切にすることと、自分自身が納得できる条件で判断すること。その両方を守るためにも、第三者の視点を入れる意味があります。
神戸市には、実家のことを相談できる窓口もある
青年のように、遠方に住んでいて実家の管理や今後の扱いに困っている場合、最初から売却先を決める必要はありません。
神戸市には、住まいや空き家に関する相談窓口として「すまいるネット」があります。
実家の状況や困っていることを整理し、どのような相談先や選択肢があるのかを確認する入口として活用できます。
また、神戸市では空き家の活用に関する情報も公開しています。
参考:神戸市「空き家の活用」
ただし、空き家に関する制度や支援策には、建物の状態、区域、利用目的などの条件が設けられている場合があります。東灘区の住宅地にある家だからといって、すべての制度を利用できるわけではありません。実際に利用を検討する際は、公式情報で対象要件を確認する必要があります。
売却先を決めることよりも先にできること
私がこの相談でまず考えるのは、依頼者に「売るか、売らないか」を決めてもらうことではありません。
今の依頼者に必要なのは、実家について考えるための時間と、判断できる材料を整えることではないでしょうか。
まずは、家の状態を確認する。家財の整理がどの程度必要なのか、管理上の問題が起きていないかを把握する。
次に、売却の申し出や査定内容を整理し、条件を比較できるようにする。親戚から紹介された相手についても、話を聞くかどうか、どのような条件なら検討できるのかを、依頼者自身が決められるようにします。
そのうえで、売却だけでなく、賃貸や活用、一定期間保有する可能性も含めて考える。
大切なのは、選択肢を知らないまま、周囲のペースで決めてしまわないことです。
ご両親が思いを込めて建てた家だからこそ、簡単には決められない。その気持ちは、決して不合理なものではありません。
一方で、管理が難しい現実もあります。だからこそ、思い出を大切にすることと、これからの負担を減らすことを、両立できる道を探していく必要があります。
実家終活代行は、売却を急がせるためのサービスではありません。
家の現状を整理し、選択肢を比較し、必要な専門家や事業者につなぎながら、実家をどうするかという判断を支えるものです。
東京で働きながら、神戸の実家のことを一人で抱え込んでいる依頼者にとって、まず必要なのは「早く決めること」ではなく、一人で決めなくてもよい状態をつくることなのかもしれません。
実家じまいについて、もっと詳しく知りたい方へ
実家じまいには、片付け、相続、売却、解体、税金など、さまざまな問題が関わります。特に、田舎の売れない実家や、遠方にある空き家は、何から手をつければよいのか分からず、先延ばしになりがちです。
実家じまいの進め方や費用について、以下の2つの完全ガイドで詳しく解説しています。
【実家じまい完全ガイド】
実家の片付けから売却・処分まで、具体的な手順と選択肢をまとめました。
https://zikkazimai.jp/column/zikkazimai-guide/
【実家じまいのお金と税金・完全ガイド】
相続、売却、解体にかかる費用や、知っておきたい税金の制度・特例を解説しています。
https://zikkazimai.jp/column/zikkazimai-money-tax/
売れない実家、処分できない土地、片付かない空き家でお困りの方へ。
実家終活代行では、物件の状況を調べ、売却・譲渡・片付けなどの現実的な選択肢を整理する「無料診断」を行っています。
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関連する制度・相談先・公式情報リンク集
– 国土交通省「空き家対策」 空き家の管理や対策に関する国の情報。
– すまいるネット(神戸市住まいの安心支援センター) 神戸市内の住まい・空き家に関する相談窓口。
– 神戸市「空き家の活用」 神戸市の空き家活用に関する情報。
– 国土交通省「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」 不動産会社などの宅地建物取引業者情報を確認するための検索システム。
– 国税庁「法人番号公表サイト」 法人の名称・所在地などを確認するための公的サイト。
– 神戸市「消費生活センター」 契約や勧誘など、消費生活上のトラブルに関する相談窓口。
– 兵庫県「ひょうご空き家対策・総合相談窓口」 兵庫県内の空き家対策や相談に関する情報。
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