――母が亡くなり、実家が空き家になった。
遠方に住んでいるため、気軽に様子を見に行くこともできない。家の中には、親が暮らしていた頃の荷物がそのまま残っている。
売却したほうがいいのか。それとも、解体したほうがいいのか……。
考えなければいけないことは分かっていても、何から手をつければよいのか分からず、時間だけが過ぎてしまうことがあります。
今回は、島根県邑南町の山あいにある実家を例に、親が亡くなって1年が経過した家を、これからどうしていけばよいのか考えてみます。
母が暮らした、島根県邑南町の山あいの家
依頼者の母が暮らしていたのは、島根県邑南町の山あいにある一軒家。
自然に囲まれた静かな場所で、母は自分のペースで暮らしていました。庭の手入れをし、家の中を整え、長年使ってきた家具や道具に囲まれた生活。
しかし、母が亡くなってから1年。
家は空き家になり、庭の草木も伸びてきました。家の中には、母が使っていた家具や衣類、日用品などが残っています。
相続した家をどうするか、考えなければならない。
けれど、遠方に住んでいると、片付けのために何度も通うだけでも大きな負担です。
亡くなった母の家。なぜ、何も進められないのか?
実家のことが進まない理由は、単に忙しいからとは限りません。
たとえば、次のような事情が重なっていることがあります。
- 距離の問題:家が遠く、頻繁に通うことができない
- 荷物の問題:何を残し、何を処分すればよいのか分からない
- 家の状態:庭の草木や建物の傷みが気になる
- 費用の問題:片付けや解体に、どれくらいのお金がかかるのか分からない
- 今後の方針:売却するのか、解体するのか、別の方法があるのか判断できない
- 地域との関係:近隣への挨拶や、地域の方とのやり取りも気になる
こうした問題を一度に解決しようとすると、かえって動けなくなってしまいます。
だからこそ、最初に必要なのは、売却や解体を決めることではありません。
まずは、家と土地の現状を整理することです。
何から始めればいい? まずは家と土地の現状を確認する
最初に確認したいのは、次のようなことです。
- 土地と建物の名義は誰になっているか
- 相続登記は済んでいるか
- 土地や建物の境界、接道状況はどうなっているか
- 建物に大きな傷みや雨漏りなどはないか
- 電気・水道などの契約はどうなっているか
- 家の中に、残すべき書類や貴重品はないか
- 庭や建物の管理を、今後どのように続けるか
遠方に住んでいる場合、すべてを一度に確認する必要はありません。
手元にある固定資産税の通知書や登記関係の書類を確認するだけでも、分かることがあります。
現地に行かなければ分からないことと、書類や電話で確認できることを分けて考えると、次の行動が見えやすくなります。
相続登記については、法務省の案内も参考になります。
実家は「売る」か「解体する」しかないの?
山あいにある古い家の場合、「売却は難しいのではないか」「解体するしかないのではないか」と考えるかもしれません。
しかし、最初から選択肢を二つに絞る必要はありません。
家と土地の状態、地域の需要、管理にかかる費用などを確認したうえで、複数の方法を比較してみましょう。
1.建物を残したまま売却する
建物が古くても、土地や建物の条件によっては、住宅として利用したい人がいるかもしれません。
ただし、山あいの立地や道路との関係、建物の状態などによって、売却の難易度は変わります。
不動産会社に相談する際は、売却できるかどうかだけでなく、どのような条件なら可能性があるのかも確認しておきたいところです。
2.邑南町の空き家情報を確認する
自治体によっては、空き家の情報を公開し、住まいを探している人などに紹介する制度があります。
邑南町についても、空き家に関する情報や相談窓口が設けられているか、町の公式サイトで確認してみましょう。
制度を利用できる場合でも、登録条件や手続き、物件の状態などによって対応は異なります。
3.無償譲渡など、売却以外の方法を検討する
売却価格がつきにくい家でも、条件によっては無償譲渡などが選択肢になることがあります。
ただし、無償で譲る場合も、相手が見つかるとは限りません。また、所有権移転の手続きや、建物・土地の管理責任などについて確認が必要です。
「無償なら手放せる」と決めつけず、必要な費用や手続きを含めて検討することが大切です。
4.解体して、土地としての活用を考える
建物の傷みが大きい場合などには、解体を検討することもあります。
ただし、解体費用をかけても、その後に土地を売却できるとは限りません。
解体を決める前に、土地の条件や周辺の需要、解体費用、解体後の管理について確認しておきましょう。
自治体によっては、空き家の解体などに関する補助制度を設けている場合があります。邑南町で利用できる制度があるか、対象となる建物や申請時期なども含め、町の公式情報や担当窓口で確認する必要があります。
解体費用や制度を調べる前に、確認しておきたいこと
解体や補助金の情報を調べ始めると、費用や条件が気になってきます。
もちろん、それらを確認することは大切です。
ただし、先に解体を決めてしまうと、建物を残して売却する可能性や、別の活用方法を検討する機会が狭まることもあります。
大切なのは、解体費用だけで判断せず、家と土地をどうするかという全体像の中で考えることです。
また、相続した土地については、一定の要件を満たす場合に国へ所有権を移す「相続土地国庫帰属制度」があります。
ただし、建物がある土地はそのままでは制度の対象にならないなど、利用には要件があります。どのような土地でも引き取ってもらえる制度ではありません。
詳しくは、法務省の公式案内を確認してください。
家の中にあるものを、どう整理するか
実家の整理で、もう一つ大きな負担になるのが、家の中に残された荷物です。
家具、衣類、食器、書類、写真。
長年暮らしてきた家には、単なる不用品として割り切れないものも多くあります。
すべてを一度に片付けようとすると、時間も労力もかかります。
まずは、次のように分けて考えてみてはいかがでしょうか。
- 先に確認するもの:通帳、印鑑、権利証、契約書、保険関係の書類など
- 家族で相談するもの:写真、思い出の品、形見分けしたいもの
- 処分を検討するもの:使用予定のない家具、日用品など
片付けを業者に依頼する場合も、何を残すのか、どこまで作業をお願いするのかを整理しておくと、見積もりや依頼内容を比較しやすくなります。
遠方に住んでいる場合は、現地での作業を何度も繰り返さなくて済むよう、訪問前に確認事項をまとめておくことも大切です。
「何も決められない1年」も、無駄だったわけではない
母が亡くなってから1年。
何もできなかったと感じるかもしれません。
けれど、実家をどうするかという問題は、単に家を売るかどうかだけではありません。
親が暮らしていた場所への思い。残された荷物。費用のこと。家族との相談。遠方からの管理。
いくつもの問題が重なっているからこそ、すぐに答えを出せないこともあります。
大切なのは、これまでの1年を責めることではなく、これから何を確認すれば前に進めるのかを整理することです。
私が担うのは、答えを押しつけることではありません
私が実家終活のご相談で大切にしているのは、最初から「売りましょう」「解体しましょう」と結論を出すことではありません。
まずは、今の状況を聞き、何が分かっていて、何が分かっていないのかを整理します。
そのうえで、
- 何を先に確認するべきか
- どのような選択肢が考えられるか
- それぞれにどのくらいの費用や手間がかかりそうか
- どの専門家や事業者に相談する必要があるか
を、一つずつ整理していきます。
不動産会社、片付け業者、解体業者、司法書士など、それぞれの専門家に相談する必要がある場合もあります。
私がすべての作業を直接行うのではなく、何を、どの順番で、誰に相談するのか。その道筋を整理することが役割です。
母が大切にしていた家を、これからどうしていくか
実家のことを考え始めると、売却や解体、片付けなど、決めなければならないことが次々に出てきます。
けれど、最初からすべてを決める必要はありません。
まずは家と土地の現状を確認する。次に、残された荷物や家族の意向を整理する。そして、売却・譲渡・解体などの選択肢を比較する。
その順番で考えることで、今まで見えなかった道筋が見えてくることがあります。
「何から始めればいいのか分からない」
その段階でも、相談していただいて大丈夫です。
実家終活代行では、土地・建物の状態だけでなく、法務、費用、管理の難しさ、親族間の事情なども含めて整理する診断を行っています。
まだ売るかどうか決まっていない。家族と話し合えていない。片付けにも手をつけられていない。
そんな状態からでも、まずは現状を整理し、これからの選択肢を一緒に考えていきます。
参照URL一覧
- 邑南町公式サイト:空き家に関する情報、町の制度・相談窓口の確認
- 法務省|相続登記の申請義務化について:相続登記に関する制度の確認
- 法務省|相続土地国庫帰属制度について:相続土地国庫帰属制度の要件などの確認
※邑南町の空き家情報制度や解体補助制度については、公開時点での正式名称・募集状況・対象要件を、町の公式情報で確認してから具体的に記載することをおすすめします。
執筆:実家終活代行 代表 半沢 真也