「実家の管理をお願いしていた親戚から、突然、売却の書類を渡されました」
依頼者は、関東に住む40代の女性。
東京で結婚し、現在は夫婦二人で暮らす依頼者の女性。お父様が亡くなり、大阪にある実家を相続しました。
遠方に住んでいるため、実家の管理は大阪在住のお父様の弟、つまり叔父にお願いしていました。といっても、頼んでいたのは部屋の換気や簡単な掃除など、家を傷ませないための最低限の管理です。
実家を今後どうするかは、まだ何も決められずにいました。何度か大阪へ足を運び、ようやく自分の私物の整理が落ち着いたところでした。
ところが、先日、整理のために実家を訪れた際、管理をお願いしていた叔父から、売却に向けた書類を渡されたのです。
話を聞くと、叔父は知り合いの不動産会社に連絡し、すでに査定や売却の話を進めていたとのこと。
「万博の前に売っといたらよかったんや。ぐずぐずしてたら大損しまっせ」
叔父は、そんな調子で売却を勧めてきます。
本人としては、遠方に住む姪のためを思ってのことでしょう。家の管理を引き受け、知り合いの不動産会社にも声をかけてくれた。親切心からの行動だったのかもしれません。
それでも依頼者の女性にとっては、まだ何も決めていない実家のこと。突然、売却する方向で話が進んでいることに、戸惑いを感じてしまいました。
■親戚が動いてくれた。でも、実家を売ると決めたわけではない
叔父の言うことにも、一理あります。
人が住まなくなった家は、換気や掃除を続けていても、少しずつ傷んでいくことがあります。建物の状態が悪くなれば、売却や活用の選択肢にも影響するかもしれません。
また、空き家を所有し続ける場合には、建物の維持管理や固定資産税などの負担もあります。
大阪市も、空き家の適切な管理や利活用などについて情報提供を行っています。空き家をそのままにしておくことにも、管理上の課題があるのです。
ただし、空き家だからといって、必ずすぐに売却しなければならないわけではありません。
売却するのか、しばらく維持するのか、別の形で活用するのか。建物の状態や費用、家族の意向などを確認しながら考える必要があります。
そして何より、叔父に管理をお願いしていたことと、実家の売却を任せたことは別の話です。
「管理をお願いしていたから、売却まで任せたことになっているのだろうか」
もし、そんな不安があるなら、まずは何を頼んでいたのか、どのような書類が作られているのかを確認するところから始めましょう。
■査定の話と、売却の契約は違います
親戚が不動産会社に相談したり、査定を依頼したりしていたとしても、それだけで実家の売却が決まったわけではありません。
不動産会社に価格を尋ねることと、売却を正式に依頼する媒介契約を結ぶこと、さらに買主と売買契約を結ぶことは、それぞれ異なる段階です。
今回のように、親戚がどこまで話を進めているのか分からない場合は、まず次の点を確認する必要があります。
- 不動産会社に相談し、査定を依頼しただけなのか
- 売却を依頼する媒介契約を結んでいるのか
- 売買契約書など、ほかの書類が作成されているのか
- 依頼者本人の署名や押印が必要な書類なのか
- 叔父に、何らかの代理権を与えたことがあるのか
民法では、代理権のない人が本人の代理人として契約などの法律行為をした場合、本人が追認しなければ、原則として本人に対してその効力を生じないとされています。
ただし、実際にどのような行為が行われたのか、代理権があったのか、本人が後から承認したといえる事情があるのかなどによって、判断は変わります。
ですから、「親戚が勝手に進めたのだから、すべて無効です」と、すぐに結論づけることはできません。
書類の内容や契約の状況が分からない場合は、まず事実関係を確認しましょう。すでに契約が結ばれている、本人の知らない署名や押印がある、といった場合には、弁護士などの専門家に相談することも必要です。
■相続した実家の名義も確認しておきましょう
もう一つ確認しておきたいのが、実家の登記名義と相続の状況です。
依頼者の女性が実家を相続したといっても、相続登記が済んでいるか、ほかに相続人がいるか、遺言書があるかなどによって、手続きの進め方は異なります。
複数の相続人がいる場合、遺産分割が済んでいない不動産をどう扱うかについては、相続人間の権利関係を確認する必要があります。実家全体を売却するのであれば、誰がどの権利を持っているのかを整理しなければなりません。
また、相続登記は2024年4月1日から申請が義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、原則として相続登記を申請する必要があります。
ただし、相続登記が済んでいないからといって、相続人が何もできないということではありません。まずは登記名義や相続関係を確認し、必要な手続きを把握することが大切です。
登記や相続関係の具体的な確認・手続きについては、司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
■「ぐずぐずしてたら大損しまっせ」と言われると、焦ってしまう
今回の依頼者の女性にとって、困ったのは売却の話が進んでいたことだけではありません。
相手は父親の弟である叔父。大阪に住む年上の男性です。遠方に住む自分に代わって、これまで実家の管理をしてくれた人でもあります。
「勝手に進めないでください」と言いたくても、これまでの感謝もあります。強い口調で話されると、つい押し切られてしまいそうになる。
「万博前に売りたかった」という叔父の言葉も、叔父なりの考えがあってのことでしょう。売却のタイミングを逃したくない、家が傷む前に手放したほうがよい。そう考えているのかもしれません。
しかし、売却の時期や価格については、実際の物件の状態や市場動向などを踏まえて判断する必要があります。過去の特定の時期に売っていれば必ず得をした、と簡単には言い切れません。
大切なのは、叔父の意見を否定することでも、言われたとおりに売却を決めることでもありません。
まずは、何が決まっていて、何がまだ決まっていないのかを整理することです。
■第三者と一緒に、実家の状況を整理する
こうしたとき、家族だけで話し合おうとしても、感情が先に立ってしまうことがあります。
親戚の親切心はありがたい。でも、自分の意思も大切にしたい。そんなときは、いったん家族の外にいる第三者と一緒に、状況を整理してみるのも一つの方法です。
私が通常の相談業務としてお手伝いできるのは、例えば次のようなことです。
- 実家の現在の状況や、これまでの経緯を整理する
- 売却に向けて、どのような話や手続きが進んでいるのかを確認する
- 売却する場合と、すぐには売却しない場合の選択肢を整理する
- 今後、誰に何を確認すればよいのか、進める順番を考える
- 必要に応じて、不動産会社や専門家に確認すべきことを整理する
私が親戚との間に入って、法律上の交渉や紛争の解決をするわけではありません。不動産の仲介や登記手続きを代わりに行うものでもありません。
ただ、目の前の状況を整理し、「今、何を決める必要があるのか」「まだ決めなくてよいことは何か」を一緒に考えることはできます。
実家のことは、売却するかどうかだけでなく、家の状態、残っている荷物、維持管理の負担、家族の気持ちなど、いくつもの要素が関係します。
一つひとつを整理していけば、漠然とした不安が、具体的に確認すべき課題へと変わっていきます。
■まだ何も決まっていない段階でも、ご相談ください
「親戚が売却の話を進めているけれど、自分はまだ決められない」
「不動産会社から書類を渡されたけれど、何を確認すればよいのか分からない」
「親戚の言うことも分かる。でも、自分の気持ちが追いつかない」
そんな段階でも、相談していただいて構いません。
実家終活代行は、売却を急がせるためのサービスではありません。実家の現状を整理し、選択肢を確認し、次に何をすればよいのかを一緒に考えるための窓口です。
実家をどうするか、まだ決められない。親戚との関係も大切にしたい。
そんなときこそ、一人で抱え込まず、まずは状況を整理するところから始めてみませんか。
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実家のこと。一人で悩まず、一緒に考えましょう。
実家じまいについて、もっと詳しく知りたい方へ
実家じまいには、片付け、相続、売却、解体、税金など、さまざまな問題が関わります。特に、田舎の売れない実家や、遠方にある空き家は、何から手をつければよいのか分からず、先延ばしになりがちです。
実家じまいの進め方や費用について、以下の2つの完全ガイドで詳しく解説しています。
【実家じまい完全ガイド】
実家の片付けから売却・処分まで、具体的な手順と選択肢をまとめました。
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【実家じまいのお金と税金・完全ガイド】
相続、売却、解体にかかる費用や、知っておきたい税金の制度・特例を解説しています。
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■参考情報・関連リンク
- 法務省|相続登記の申請義務化 相続登記の申請義務や、申請期限などについて確認できます。
- e-Gov法令検索|民法 代理権のない人が行った契約などに関する民法の規定を確認できます。
- 大阪市|空き家対策に関する案内 大阪市の空き家対策や、適切な管理・利活用に関する情報を確認できます。
- 国土交通省|不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム) 地価公示や不動産価格など、不動産に関する情報を確認できます。
- 大阪司法書士会 相続登記や不動産登記など、司法書士への相談に関する情報を確認できます。
執筆:実家終活代行 代表 半沢 真也