「実家を売る話が、思っていたよりも早く進んでいる。でも、本当にこのまま進めていいのだろうか……?」

不動産会社から予想以上に高い査定額を提示されたとき、うれしさと同時に、そんな戸惑いを感じることがあるかもしれません。

特に、親が亡くなった後の実家を整理している場合、建物の傷みや残された荷物、相続の手続きなど、考えなければならないことがいくつもあります。

そこに「この金額で売れそうです」という話が加われば、家族の気持ちも動きます。一方で、話が早く進むほど、疑問を口にしにくくなることもあります。

今回は、品川区・五反田にある古い実家を題材に、高額査定を受けたときに何を確認すればよいのかを考えます。

※この記事は、実家終活で起こり得る状況をもとにした相談事例です。実在の相談者や取引を紹介するものではありません。

五反田の古い実家に、思いがけない高額査定

ご相談者のお父様は、趣味のために五反田に小さな家を所有していました。

駅からのアクセスも悪くなく、土地の立地には一定の魅力があります。ただ、長い間、日常的に使われていなかったため、建物は傷み、室内には趣味の道具や家具などが残ったままです。

お父様が亡くなり、ご相談者は妹と一緒に実家をどうするか考え始めました。

そんなとき、お父様の趣味仲間から不動産会社を紹介されます。

そしてその担当者が提示した査定額は、家族が想像していたよりも高いものでした。

妹は「こんな金額で売れるなら、早く進めたほうがいい」と前向きです。しかし、ご相談者は少し立ち止まっていました。

「建物はかなり傷んでいるし、荷物もそのまま。こんな状態でも、本当にこの金額で売れるのだろうか?」

紹介してくれた人の顔もあります。せっかく話を進めてくれている不動産会社に、疑うような質問をするのも気が引けます。

けれど、相続した実家を売るというのは、家族にとって大きな決断です。

私がこのような相談を受けたなら、まず「その査定額が高いか、低いか」だけで判断しないようにお伝えします。

高い査定額が出たこと自体は、問題ではありません。大切なのは、その金額の根拠と、実際に売却した場合の条件を理解できているかどうかです。

古い建物でも、土地に価値があることはある

五反田のように交通利便性の高い地域では、建物が古くても、土地の立地や広さ、周辺環境などが評価されることがあります。

つまり、古い実家の査定額が高いからといって、必ずしも不自然とは限りません。

一方で、査定額を見るときには、土地と建物のどちらが評価されているのかを確認する必要があります。

例えば、次のような違いが考えられます。

  • 建物を利用できることを前提に評価している
  • 建物の価値は限定的で、主に土地を評価している
  • 建物の解体や室内の片付けなどを、売却前に行う想定になっている
  • 特定の購入希望者や利用方法を想定している

同じ金額が提示されていても、その前提が違えば、売却までに必要な作業や費用も変わります。

私なら、まず不動産会社に次のように尋ねます。

「今回の査定額は、土地と建物をそれぞれどのように評価した金額でしょうか。また、今の建物や残置物をそのままにした状態で売却できる想定でしょうか」

こうした質問は、相手を疑うためのものではありません。査定の前提を理解し、家族が判断するために必要な確認です。

周辺の取引価格を調べる際には、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」も参考になります。ただし、近隣の取引価格が、そのまま目の前の実家の売却価格になるわけではありません。土地の形状、接道、建物の状態、権利関係などによって条件は異なります。

「査定額」と「手元に残る金額」は違う

もう一つ、私が必ず確認するのは、売却後に実際にいくら残るのかという点です。

査定額が高くても、売却に向けて必要な費用が大きければ、最終的な手取り額は変わります。

例えば、今回のように建物が傷み、荷物が残っている実家では、次のような費用が発生する可能性があります。

  • 家具や家財などの整理・搬出費用
  • 家の中に残された物の撤去費用
  • 必要に応じた清掃費用
  • 建物を解体する場合の解体費用
  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 相続登記などの手続きにかかる費用
  • 譲渡所得税など、売却に伴う税金

もちろん、これらがすべて必要になるわけではありません。残置物を残したまま売却できる場合もありますし、解体せずに売却する選択肢もあります。

だからこそ、最初から「片付けてから売る」「解体してから売る」と決めつけず、複数の方法を比較することが大切です。

私なら、不動産会社に提示された査定額だけでなく、売却方法ごとの費用と、最終的な手取り額の見込みを整理します。

また、仲介で売る場合と、不動産会社などに直接買い取ってもらう場合では、売却の進め方や価格、条件が異なります。

「仲介なら高く売れる」「買取なら早く手放せる」と単純に決めるのではなく、今回の実家では何を優先したいのかを家族で考える必要があります。

高額査定だからといって、疑う必要はない。ただし、確認はしたい

不動産会社から高い査定額を提示されると、「何か裏があるのではないか」と不安になる人もいるでしょう。

しかし、査定額が高いという理由だけで、不動産会社に問題があると判断することはできません。

反対に、知人からの紹介だから、担当者の説明が丁寧だからという理由だけで、すべてを任せてしまう必要もありません。

私なら、紹介者との関係と、売却の判断をいったん切り分けます。

紹介してくれた人への感謝は伝えながらも、契約内容や費用については、自分たちが納得できるまで確認します。不動産会社に査定額の根拠を尋ねることも、契約書を持ち帰って検討することも、失礼なことではありません。

不動産会社が提示する価格については、宅地建物取引業法第34条の2第2項に、媒介価額について意見を述べる際の根拠の明示に関する規定があります。実際の適用関係や具体的な対応については、契約の状況に応じて確認が必要です。

条文はe-Gov法令検索「宅地建物取引業法」で確認できます。

契約を急ぐ前にこの5つを確認する

ご相談者から「不動産会社の話がどんどん進んでいて、どうしたらいいか分からない」と聞いたら、私なら、まず次の5点を一緒に整理します。

1.査定額の根拠は説明されているか

土地と建物をどのように評価したのか。周辺の取引事例や、想定している買主・利用方法など、金額の根拠を確認します。

2.売却方法は何か

仲介による売却なのか、不動産会社による買取なのか。売買の相手方や、売却までの流れを把握します。

3.売却前に必要な作業は何か

荷物の整理、清掃、解体などが必要なのか。誰が、いつまでに、どの程度の費用を負担するのかを確認します。

4.契約条件に分からない点はないか

売買価格だけでなく、手付金、引き渡し時期、契約解除の条件、契約不適合責任など、契約書に記載された内容を確認します。

分からない条項があれば、その場で結論を出さず、説明を求めたり、必要に応じて専門家に相談したりします。

5.家族全員が判断できる状態か

妹は早く売却したい。ご相談者は、もう少し確認してから決めたい。

このような違いがあるとき、どちらかの意見にすぐ合わせる必要はありません。

まずは、何が不安なのか、何を確認できれば判断できるのかを言葉にして、家族で共有します。

「売るか、売らないか」を決める前に、「何が分かっていて、何が分かっていないのか」を整理する。 私なら、そこから始めます。

五反田の「地面師事件」から考えること

品川区・五反田周辺では、積水ハウスが西五反田の土地取引をめぐって巨額の被害を受けた、いわゆる「地面師事件」が知られています。

もちろんこの事件と、今回のような「古い実家に高い査定額が出た」という状況は、同じものではありません。

地面師事件は、土地の所有者になりすますなどして不動産取引を進めた事件です。査定額の高さをめぐる一般的な不安とは、問題の性質が異なります。

この事件から実家終活において考えたいのは、金額の大小だけでなく、権利関係や取引の手続きについても、確認を省かないことです。

相続した実家であれば、登記上の所有者は誰なのか、相続登記は済んでいるのか、売却に必要な関係者の合意は得られているのか。

こうした基本的な確認を、売却の話が進んでから慌てて行うのではなく、早い段階で整理しておくことが大切です。

相談先は、不動産会社だけでなくてもいい

不動産会社の説明を聞いても判断できないときや、契約内容に不安があるときは、別の相談先を利用する方法もあります。

例えば、東京都では住宅や不動産に関する相談窓口の情報を案内しています。内容に応じて、東京都の住宅政策に関する情報から確認できます。

また、品川区に住んでいる方や、品川区内の消費生活に関する相談をしたい場合は、品川区公式サイトで相談窓口を確認できます。

法律上の問題や相続に関する相談先を探す場合は、法テラスも選択肢の一つです。

相談先によって対応できる内容は異なります。売却価格の妥当性、契約上の問題、相続登記、税金など、何について確認したいのかを整理してから問い合わせると、相談を進めやすくなります。

実家終活は、売却を急ぐことではなく、納得して判断すること

今回のご相談者のように、家族の一人は売却に前向きで、もう一人は不安を感じている。そんな状況は、決して珍しいものではありません。

しかも、実家には親との思い出があり、残された荷物もあります。

不動産会社から高い査定額を提示されれば、早く話を進めたくなるのも自然なことです。

けれど、実家終活で大切なのは、査定額だけを見て結論を出すことではありません。

  • どのような条件で売れるのか
  • 売却までに何が必要なのか
  • 費用を差し引いて、いくら残る見込みなのか
  • 家族が納得して判断できているか

これらを整理したうえで、売却するのか、別の方法を考えるのかを決めればよいのです。

私が実家終活の相談を受けたときも、最初から「売りましょう」「解体しましょう」と結論を決めることはしません。

まずは、土地や建物の状態、名義、残された荷物、家族の意向などを整理し、どのような選択肢があるのかを見える形にします。

不動産会社の査定額に疑問があるときも、すぐに相手を疑うのではなく、確認すべきことを一つずつ整理する。そのための第三者がいてもよいと考えています。

「まだ売ると決めていない」「不動産会社の話をどう受け止めればいいか分からない」

そんな段階でも、実家終活の相談はできます。

実家終活代行では、土地・建物の状態だけでなく、法務面、費用面、家族の意向なども含めて整理する「ご実家総合診断」を行っています。

何から確認すればよいか分からない方は、まずは現在の状況をお聞かせください。売却ありきではなく、納得して次の一歩を考えるための整理からお手伝いします。

参照したURL

  1. 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
    https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
  2. e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000176
  3. 東京都住宅政策本部
    https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/
  4. 品川区公式サイト
    https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/
  5. 法テラス
    https://www.houterasu.or.jp/
  6. 国土交通省「宅地建物取引業者の検索」
    https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/takkenKensaku

執筆:実家終活代行 代表 半沢 真也